浸水履歴を調べようとして、地図を開いたものの「これは今も危ないということ?」と迷ってしまう方は少なくないと思います。過去に水が出た場所を示す情報と、将来の浸水リスクを示す情報は、見た目が似ていても中身はまったく別のもの。引っ越しや住まいの備えを考えながら調べている場合、この違いを最初に押さえておくかどうかで、読み取り方がかなり変わります。
地域情報メディア『あだちリンク』のエリア担当ライター、タカです。足立区に住んでいるわたしも、引っ越し先を探す家族に聞かれてあらためて資料を見直したことがあります。そのとき気になったのが、公式の地図が何種類もあって、どれを見ればいいかが分かりにくいこと。
この記事では、浸水履歴で分かることとその限界、ハザードマップとの読み分け方、足立区で確認できる公式資料、住まいを選ぶときに見落としやすい点を順番に整理します。
浸水履歴を見ると何が分かるのか
足立区が公開している「水害区域図(浸水履歴)」には、平成6年度以降に区内で発生した道路冠水・床下浸水・床上浸水の被害箇所が記録されています。実際にどの場所でどんな被害があったか、地図上でおおよそのエリアを確認できます。
ただし、公式資料には注意書きがあります。「おおよその範囲を示しており、実際の浸水範囲とは異なる場合があります。また、浸水の深さなど個々の被害に関する詳細な状況は把握していません」というもの。ピンポイントで「この番地の建物が浸水した」とは読めない資料です。
過去に起きた事実の記録、という性格のもの。将来の予測ではありません。
ハザードマップと浸水履歴はどう違うのか
混同しやすいのが、「浸水履歴」と「ハザードマップ」の違いです。浸水履歴は過去に実際に起きた被害の記録で、ハザードマップは「もし大雨や氾濫が起きたら、どのくらいの浸水が想定されるか」を示した将来の予測図。時間軸が根本的に異なります。
足立区のハザードマップ(令和4年4月改訂)は、洪水・内水氾濫・高潮の3種類が一冊にまとめられています。荒川や中川など主要河川の想定最大規模の降雨をもとに作られており、場所によっては5メートル以上の浸水深が示されています。
どちらか一方だけ見れば足りる、というものではありません。過去の記録と将来の想定、両方を並べて見ることで、その地域の水と地形の関係が少しずつ見えてきます。
足立区で確認できる公式の資料一覧
わたしが実際に調べたとき、最初に迷ったのが「どのページを見ればいいか分からない」ということでした。足立区の公式サイトにはいくつかの資料が別々に掲載されているので、主なものをまとめておきます。
- 水害区域図(浸水履歴)
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平成6年度以降の道路冠水・床下浸水・床上浸水の被害箇所を地図で示したもの。令和6年6月更新。区の都市建設課が担当。
- 洪水・内水・高潮ハザードマップ
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将来の浸水想定を示した地図。令和4年4月改訂・令和5年11月一部更新。荒川・利根川・中川・綾瀬川など複数の河川が対象。
- 江東5区大規模水害ハザードマップ
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荒川・江戸川が同時氾濫した場合の広域避難を前提にした資料。足立区を含む5区が共同で作成。
いずれも足立区の公式ウェブサイトから無料でPDFを確認できます。問い合わせは「お問い合わせコールあだち(03-3880-0039)」か、都市建設課の窓口でも対応してもらえます。
河川の氾濫と内水氾濫で見方が変わる
足立区の水害を調べるとき、「どの川が原因か」という視点を持っておくと地図が読みやすくなります。荒川・利根川・中川・綾瀬川・芝川・新芝川など、足立区には複数の河川があり、それぞれの浸水想定区域図が別ページで公表されています。
一方で、内水氾濫は川の話ではありません。大雨のときに下水道の処理が追いつかず、排水できない水が道路や建物に溢れる現象。川から離れた場所でも起きることがあります。
足立区の区全域で内水氾濫のリスクがハザードマップに示されており、「川に近くないから安心」とは単純に言い切れないのが、この地域の特徴のひとつです。
浸水履歴を読むときに注意したいこと
浸水履歴の地図を見るとき、先に確認しておきたいのは「いつの被害か」という時期です。足立区の資料では平成6年度以降の記録が対象で、それ以前は下水道普及率が低く、被害の状況が大きく異なるため、公表範囲が区切られています。
また、同じ場所でも台風の規模や降雨のタイミングによって被害の出方は変わります。「過去に浸水した=今も必ず浸水する」ではなく、「こういう条件のときに被害が出た場所」という読み方が自然です。
被害箇所の記録はあくまで「おおよその範囲」であり、特定の番地や建物の安全性を示すものではないという公式の注意書きは、読み進める前にひとつ頭に置いておくといいと思います。
過去の大きな水害で知っておきたい背景
足立区では1980年代から90年代にかけて、荒川や毛長川の氾濫で1,000世帯以上が被害を受けた水害が複数ありました。その後、河川の護岸整備や排水施設の整備が進み、大規模な被害件数は以前と比べて減っています。
ただ、整備が進んだ後でも局所的な冠水や床下浸水は発生しています。整備の前後でどう変わったかを見るには、平成6年度以前と以降を分けて考えることが前提になります。
住まい選びで見落としやすい視点
引っ越しや住宅購入を考えているとき、ハザードマップを確認する方は増えてきました。一方で浸水履歴まで見ている方は、まだそれほど多くないかもしれません。
わたしが個人的に気になるのは、地図だけでなく「地盤の高さ」との関係です。足立区は低地が多く、同じ丁目の中でも数十センチの高低差がある場所があります。周辺より少し低い場所に建物が立っている場合、冠水時に水が集まりやすいことがあります。
国土地理院の「地理院地図」では標高や微地形を無料で確認できます。浸水履歴と合わせて見ると、地形との関係が少し分かりやすくなります。
現地で見ておきたい周辺の環境
地図の確認と並行して、実際に現地を歩いてみると気づくことがあります。道路の傾き、近くに水路や暗渠(あんきょ。かつての川を蓋で覆った排水路)がないか、マンホールの位置なども目に入ってきます。

低い場所にある駐車場や駐輪場も、冠水のとき先に水が来やすいですよ
内覧のとき、玄関や駐車場が道路より低い構造になっていないかも確認しておくと安心です。地図で見えない細かな高低差が、現地では意外と分かります。
備えにつなげるための見方と順番
浸水履歴やハザードマップを調べたあと、「では何をしておけばいいか」という部分まで一緒に考えておくと、調べた情報が実際の備えにつながりやすくなります。
足立区公式サイトから「洪水・内水・高潮ハザードマップ」を開き、自分の住所周辺の浸水想定深と継続時間を確認します。
同じ場所の周辺で、過去に実際に被害が出ていたかどうかを水害区域図で確認します。平成21年度以降の図も一緒に見ておくと参考になります。
ハザードマップには避難施設の情報も載っています。水害時は徒歩で移動できる範囲が変わるので、複数ルートを考えておくと安心です。
足立区では「我が家の水害リスク診断書」という取り組みも東京都と連携して進めています。住所を入力すると、その地点の浸水リスクや避難情報をまとめて確認できます。
よくある勘違いと読み方の整理
浸水関連の資料を調べていると、混同しやすい点がいくつかあります。
- 浸水履歴がない=安全、ではない
- ハザードマップの色が薄い=リスクなし、ではない
- 内水氾濫は川から離れた場所でも起きうる
- 地図の範囲はあくまで「おおよそ」の目安
- 整備後の状況は以前の履歴と条件が変わっている
意外かもしれませんが、履歴に記録がなくても「調査が追いつかなかった」「届け出がなかった」という場合もあります。記録がないこと自体を安全の証拠とは読まない方が、資料の使い方として現実に近いです。
調べる前に知っておきたい向き不向き
浸水履歴やハザードマップは、住まい選びや備えを考えるうえでとても有用な資料です。ただ、できること・できないことがあります。
「この物件は安全か」という判断は、公式資料だけでは出ません。建物の構造、1階か上階か、エントランスの高さ、過去の修繕履歴など、現地でしか確認できない要素があります。不動産取引の場合、宅地建物取引業法の改正により、売主・仲介業者はハザードマップを使って説明する義務があります。確認が不安なときは、担当者に直接聞くのも普通のことです。
足立区在住のわたしが最初に見る場所
週末にでも、まず足立区の公式サイトで「水害区域図(浸水履歴)」と「洪水・内水・高潮ハザードマップ」を並べて開いてみてください。難しい読み方は最初からしなくていい。気になる住所周辺だけ、色と地名を確認するだけでも、地図のとっつき方がひとつ変わります。
わたし自身、義理の両親が足立区内で住み替えを考えていたとき、「履歴とハザードマップを一緒に持ち歩いて、現地で見比べるといいですよ」と話しました。地図を持って歩くと、道路の傾きや低くなっている駐車場が目に入ってくる。そういう小さな気づきが、安心のベースになると感じています。
調べることが「不安を増やす作業」ではなく、「具体的に考えられる土台を作る作業」になったら、この記事を読んだ時間が少し役立てたうれしいです。まずは区の公式サイトを一度開いて、自分の住所周辺のページをブックマークするところから始めてみてくださいね。













